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歌舞伎では全編通して上演されることの少ない、五段十二場の大作です。 時は、奈良時代。 奈良の都、天智天皇に対して、軍事クーデターをおこし、天下を乗っ取った蘇我入鹿(そがのいるか)のいきさつから、物語は始まります。 最初、蘇我入鹿は、父、蝦夷子(えみじ)が帝位を狙う非道に、決死のハンスト(ハンガーストライキ:「願いが聞き入れられるまで何も食べないぞ!」)をして抗議します。 ところが、謀反の証拠があがり、父が切腹して果てると・・・ 父に替わって天下を取らんとする入鹿の人間離れしたスケールの悪をえがくのが、「蝦夷子館」。 天皇はかろうじて難をのがれ、猟師・芝六(しばろく)の家にかくまわれます。 助けたのは、藤原鎌足の息子・藤原淡海(ふじわらのたんかい)。 彼は父・鎌足の意志をついで、蘇我入鹿を退治しようと、機をうかがっています。 超人的なパワーを持つ入鹿を倒すには、二つのアイテムが必要です。 一つは「爪黒の鹿の生血」。 芝六(実はもと藤原家の家臣・玄上太郎)が、わが子の命を犠牲にして天皇をかくまい、「爪黒の鹿の生血」を手に入れるというくだりが、「芝六住家」。 さてその頃、入鹿の横暴は激しく、若いカップルがその犠牲となる。 これが「吉野川」。 ⇒『吉野川』(よしのがわ)へ 入鹿を倒すための、もう一つのアイテムが、「疑着の相(ぎちゃくのそう:嫉妬に狂った時、何万人に一人の割合で人間の顔に表れるというすさまじい悪相)の女の生血」。 アイテム1の生血とアイテム2の生血を注いだ鹿笛を奏すると、入鹿は意識を失うそうな。 というわけで登場するのが、えぼし職人の求女(もとめ)、色白で細面の美青年ですが、その正体は藤原淡海(ふじわらのたんかい)です。 その求女と恋仲なのが、なんと入鹿の妹・橘姫ですから、物語が波乱万丈なのも道理。 この二人のあいだに、造酒屋の娘・お三輪がからんで、三角関係。 そのお三輪が嫉妬に狂った時、「疑着の相」が・・・ そんなになるまで、いたぶられるお三輪のなんと可哀相な筋運び。 ⇒『三笠山御殿』(みかさやまごてん)へ お三輪を殺して、彼女の生血を鹿笛に注ぐ男が猟師・鱶七(ふかしち)、実は藤原家の家臣金輪五郎。 というわけで、必要アイテムを2つゲットして、淡海・橘姫・金輪・玄上らは入鹿に立ち向かい、見事倒します。 |
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