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「ウエストサイド物語」が「ロミオとジュリエット」の現代版なら、「妹背山婦女庭訓」の「吉野川」は、さしずめその日本版というところ。 長年にわたり領地争いをくりひろげる大判事清澄(だいはんじ きよずみ)の家と大宰少弐定高(だざいのしょうに さだか)の家。 紀伊国と大和国を治める両家の間に流れているのが吉野川です。 大判事の息子久我之助と太宰の娘、雛鳥は、深く思いをよせあいます。 でも吉野の急流のため会うことが出来ません。 「心ばかり抱き合う」毎日です。 いや、川よりもっと障害なのは、両家の仲の悪さです。 そんなある日、当時の権力者・曽我入鹿(そがのいるか)が、大判事と定高を自宅に呼びつけて言うことには、 「おまえたちの不仲は、狂言だろう。本当は協力して俺を滅ぼすつもりだな。もし『そんなことはございません』と言い張るなら、久我之助を家来に、雛鳥を妾によこせ」 と申しつけます。 思案しながら家に帰る、ふたりの親たち。 大判事も、定高も、わが子たちが相思相愛であることを知っています。・・・・ そして、妹背山にこだましたのは、あまりにも悲しい音色のウェディングベルでした・・・ 吉野川沿いの阿田の里の伝統行事である「流しびな」の趣向をとりいれた、「祝言」。 中央には吉野川が水しぶきをあげ、右手には大判事の館、左手には太宰の館、妹山・背山は共に満開の桜花。 両花道も使うといった鮮やかな春の舞台・・・ その華やかさが、悲劇を一層高めます。 ⇒『妹背山婦女庭訓』(いもせやまおんなていきん) へ |
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