五人に一人が
「伊勢に行きたい 伊勢路が見たい せめて一生に一度でも」と伊勢音頭に歌われるほど、江戸時代には伊勢神宮へ詣でる「伊勢参り」が盛んでした。最盛期には全人口の五人に一人は出かけたといわれます。
メインは遊び
ただその実態はレジャー主体で、信仰は二の次だったようです。それというのも、当時は、旅に出るにも、お上へ関所の通行手形を申請しなければならないなど、やかましい制約があり、それが「伊勢参りに行きます」と言えば、比較的、楽に許されたからです。
そんなわけで、現地では、お参りもそこそこに、昼は二見ヶ浦の「夫婦岩」あたりを観光。夜は、精進落しと称し、遊廓に繰り込むなど、大いに羽根を伸ばしたのでした。このお芝居の舞台になっている古市(ふるいち)の廓もそんな客で大賑わいだったといいます。
施行も魅力
また伊勢の街道では、施行(せぎょう)といって、旅人に食べ物や酒をはじめ、笠、杖、ワラジなど旅の必需品、さらに風呂や薬などを無料で振る舞うボランティア活動が盛んでした。なかにはその施行でもらうオニギリが「久しぶりの白いご飯」という貧しい人もいて、これも庶民には実に喜ばれたといいます。 |