野崎村で三角関係に
なかでも人気があるのが野崎村の段です。この村の百姓、久作には養子 久松と娘 おみつがいました。二人は兄妹のように育ったものの、血縁関係はないので、久作は、将来、二人を夫婦にすべく、許婚(いいなずけ)にしたのです。
久松は10歳で油屋に丁稚奉公。働くうちにお染と恋に落ちるも、悪者に盗みの濡衣を着せられ、野崎村へ戻されます。養父の久作は、これを機に、かねて許婚だったおみつと祝言(しゅうげん、結婚)させようとするのですが、そこへ、お染が、久松恋しさに訪ねてきて・・・。
口喧嘩が名物
野崎村(今の大阪府大東市)は、古くから、当地の野崎観音に詣でる「野崎参り」で知られています。昔は、大坂からは寝屋川を舟で、あるいは川の土手、徳庵堤(とくあんづつみ)を駕籠(かご)や徒歩(かち)で行きました。この道中では、舟で行く者と土手を行く者が罵り合うのが一種の名物で、これに勝つと、一年間、福があるとも言われました。
華やかさゆえに
野崎村の段のラストはその舟と駕籠を使った実に印象的なシーンです。ここで弾かれる三味線の旋律は「野崎の送り」と呼ばれる名曲で、その華やかな曲調ゆえに、かえってお染と久松の悲劇が浮き彫りになるようです。 |