でも、敵討ちを心ざす志津馬の恋人に敵討ちの伝説の残る傾城瀬川を配したことはなかなか興味深いですね。
傾城瀬川の敵討ちはお芝居や読み物などで人気を博し、文化3年(1806年)初演の『新吉原瀬川復讐』という浄瑠璃では瀬川の敵討ちの助っ人が唐木政右衛門の門弟に設定されるなど、「伊賀越」の世界と瀬川の伝説とはミックスを遂げていったようです。志津馬と傾城瀬川、まさに世紀の「敵討ちカップル」ですね。
参考文献:
内山美樹子・延広真治編『近松半二・江戸作者浄瑠璃集』(新日本古典文学大系94、岩波書店、1996年)
林英夫・青木美智男編『番付で読む江戸時代』(柏書房、2003年)
重松一義「江戸の仇討考」(『中央学院大学 人間・自然論叢』第10号、1999年7月)
|