『国性爺合戦』
(こくせんやかっせん)
くまどりん
作者はご存知、近松門左衛門。
「近松」と聞くと、心中物が有名ですが、この作品は、日本と中国を舞台にした壮大な歴史スペクタクル!
初演のときは、お客様もおお喜び、あまりのおもしろさに三年にわたる17ヶ月ののロングランとなったものです。
鄭芝龍(ていしりゅう)は、明(みん)から日本の平戸へ逃れて老一官(ろういっかん)と名のり、渚(なぎさ)を妻とし、和藤内(わとうない)をもうけました。
「わとうない」とは、和(日本)でも唐(中国)でもない日中混血のハーフという意味。
さて、海の向こうでは明の国がダッタン人の侵攻に苦しんでいるとの知らせ。
祖国のピンチを救うために、この親子三人、中国大陸へと渡ります。
明の知将・甘輝(かんき)は、今はダッタンに臣従していますが、文武に秀でた立派な男。
その妻・錦祥女(きんしょうじょ)は老一官の先妻の娘、つまり和藤内の義理の姉です。
甘輝が館をかまえる獅子ヶ城に、長旅をしてきた三人がたどりつきます。
錦祥女は、楼門の上から、なつかしい父と劇的な再会。
老一官の姿を鏡に映して、感涙にむせぶシーンが見せ場。
「あくれば朝日を父とおがみ」の義太夫にのってのクドキは、演じる俳優の芸が、舞台いっぱいにひろがるところです。
かたや和藤内は旅の途中、千里ヶ竹の猛虎を簡単に組み伏せたほどの荒男。
その力と甘輝の知将ぶりがペアを組めば、ダッタン征伐は必ず実現するのですが・・・
甘輝が今つかえているのは、ダッタンです。
義理堅い男甘輝。
説得方法はいかに?
ふたりの女の犠牲の血が流れます。
二代目團十郎以来、市川家の荒事(あらごと)としては「歌舞伎十八番」以上のステータスを持つ役・和藤内。
和藤内以上に、大人(たいじん)らしい風格を要求される役・甘輝。
日中2国にわたって生きぬいてきたたくましさと、情の深さを合わせ持つ役・老一官。
見応えのあるインターナショナル大河ロマンです。
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