『番町皿屋敷』
(ばんちょうさらやしき)
くまどりん
東京の、虎ノ門から赤坂見附へと大通りを進むと、山王神社は右手に見えます。
社殿は高台の上。
ゆるやかに湾曲してそびえる石垣とそこから下りてくる階段が、朱塗りの柱や木々の緑とつくる景観はけっこうなもの。
これをリアルに舞台に再現したのが、『番町皿屋敷』の幕あきの場面です。
境内の桜は今が盛り。そこで鉢合わせとなる、放駒四郎兵衛ら町奴(まちやっこ:町人の侠客)と、旗本奴(はたもとやっこ:不良青年武士)の青山播磨。
町奴と旗本奴の対立というのは、ようは、下町のチンピラと山の手の横着なぼんぼんのいがみ合い・・・。 現実にはロクなもんじゃなかたのでしょうが、それを歌舞伎スターの顔合わせでけんらんと見せてくれるのが、この演目!
この出会いのあと、播磨と恋仲の腰元・お菊が、彼にお見合いのはなしが持ち込まれたことで不安にかられ、自分への愛情がどれほどのものであるかを、ある方法で探ろうとします。 それが招く、予期せぬ波紋、そして悲劇・・・ と、これは一種の心理サスペンスですね。
「一まーい、二まーい・・・」の皿屋敷の怪談を、作者・岡本綺堂が大胆にアレンジした、大正期の歌舞伎の秀作です。
参照 ⇒『播州皿屋敷』(ばんしゅうさらやしき) へ
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