創演:元禄(げんろく)十二年(1699)
このお芝居、元となる資料が極端に少なく、昭和六十一年一月上演の際には、元禄十二年に初代市川團十郎が演じたときの評判記のわずか数行の記事から構想し、同時代の近松門左衛門の「弘徽殿鵜羽産屋(こきでんうのはのうぶや)」からストーリーと人物を借りて脚本が作られました。
「うわなり」とは、うわ→上→後の意味で、後妻のことです。室町時代、離別された前妻が、女友達と一緒に後妻の家を襲うと、後妻のほうも女友達を集め、そこで乱闘騒ぎになるという「うわなり打ち」という風習があったそうです。「うわなり」の漢字も「男」を二人の「女」がはさんでいます。
お芝居は甲賀三郎(こうがのさぶろう)を間にはさんで、先妻と後妻がうわなり打ちをし、先妻が恨みから鬼と化したのを三郎が退治するというもの。元禄歌舞伎のおおらかな味わいが見どころでしょう。 |