『阿古屋』
(あこや)
くまどりん
本名題:『壇浦兜軍記』(だんのうらかぶとぐんき)
阿古屋の琴責め(あこやのことぜめ)

遊君・阿古屋は、平家の残党・景清のおもいもの。
彼女は平家の落ち武者狩りの裁判に引き出され、「景清のいどころを白状しろ」と迫られますが・・・彼がどこにいるのかを、阿古屋も知らないのです。
「知れるものなら、私だって知りたい。一刻もはやく彼に会いたいんです」という、いつわりのない女ごころを、阿古屋は、琴、三味線、胡弓をつづけて演奏することで、裁判官に伝えようとします。
つまり、音色に迷いやにごりがなければ、「音は心なり」で、彼女の証言は正しいというわけ。さて判決は・・・。

壇浦兜軍記 阿古屋琴責の段(松下かほる2014年1月)
題名が示すように軍記物。「源平の戦い」の史実に作者が創作を加えて書いた作品。源氏に敗れた平家一門の残党の詮議は厳しい。源氏方は平家の武将悪七兵衛景清の行方を景清の愛妾阿古屋を捕らえて追求及するが、知らぬ存ぜぬの一点張り。
すると、阿古屋はその場で琴・三味線・胡弓を弾くことを命じられる。阿古屋の言葉が真実か否かは、演奏する楽器の音色に如実に表れるというのがその理由。楽器が現代の「ウソ発見器」の役目を負ったのだ。
舞台では、三味線弾きの奏でる楽器に合わせて阿古屋の人形が動く。大夫、三味線、人形の総合芸術 文樂のこの見せ場は圧巻。聴きどころ見どころいっぱい。

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