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解説者オーディション 受賞結果(4/29 new!)

 

最終審査を終えて、下記の通りに受賞者を決定いたしました

*受賞者のコメントをUPしました(5/8)。


最優秀賞:1名
石塚みず絵(演目『京鹿子娘道成寺』)

【受賞者コメント】
新型コロナウイルスが広がる中、桜の盆栽を買い、家の中で「花見」をしました。花が散り、すっかり葉桜になった頃、まだ残っていた小さな蕾みが膨らみ、可憐な花を咲かせました。その日の夕方、最優秀賞受賞の連絡が。今朝の桜はまさに吉兆だったのかと驚き、うれし涙が止まりませんでした。
二次審査の課題は「京鹿子娘道成寺」でした。長唄三味線の師範でもある私は本領発揮とばかりに張り切りました。でも、それでは独りよがりになりがち。友人らを集め、DVDを見ながら私の「ガイド」を聞いて、分かりにくい箇所にダメ出しをしてもらいました。お陰様で目標にしている、初心者にも分かりやすく、大向こうをも唸らせるという解説に少しは近づけたように感じました。
還暦を数年後に控える今、新たな世界へ踏み出そうとしています。二度咲き?をして私を励ましてくれた葉桜を見習い、目標に向かって惜しまず努力を続けたいと思います。
優秀賞:1名
鈴木桂一郎(演目『義経千本桜』)

【受賞者コメント】

二度目の挑戦で、オーディション合格の報を受け、嬉しく思っている。前回落選した時、歌舞伎を自分の思いだけで楽しんでいた事を省みて、歌舞伎評論の先達が、歌舞伎のどこを見て、素晴らしいと思ったのかを著書で確認し、そこに自分の視点を重ねて歌舞伎を観るように、見方そのものを変えた。義太夫も、書物で予め読んで、何を語っているのか調べた上で、観る事にした。更に、観る度、自分なりの歌舞伎評論をまとめる作業を、ここ数年行ってきた。こうした歌舞伎の見方の変化が、今回の優秀賞に繋がったと自分なりに理解している。
歌舞伎は江戸時代のタイムカプセルであり、玉手箱と思って楽しんでいる。憧れの江戸時代に、タイムスリップして旅をするのが、私は大好きだ。イヤホンガイドの解説者として、歌舞伎を通して、江戸の世界の案内役を果たしたいと思っている。

令和チャレンジ賞(入選):3名  審議の結果、今後が期待される方々にも入選枠の賞を設けました。

鈴木裕里子(演目『京鹿子娘道成寺』)

【受賞者コメント】

「歌舞伎は非日常だ。」
これは、私が今回のオーディション1次課題として提出した作文の冒頭である。歌舞伎が私にもたらす高揚感を表しての言葉であったが、今はまた違う意味を持つ。まさか日本中で歌舞伎興行のかからない月が出てくるなぞと誰が想像しただろうか。恥ずかしながら私は「歌舞伎が公演中止?それは確かに非常事態だ!」と思った人間である。
そんな状況下において入選との知らせが入り、久々に「ハレ」の気分にさせて頂いた。ただ己の楽しみのために観ていた歌舞伎だが、これからまた新たな視点で勉強を重ねることで、歌舞伎を観にいらっしゃるお客さまの役に立てる日が来たらいいな、と思っている。
まずは日常を取り戻すこと。そして非日常へと私たちを誘なう歌舞伎興行が再開されることを祈って。
この度は選出頂きまして、ありがとうございました。

 

立木つねこ(演目『義経千本桜』)

【受賞者コメント】

このたび受賞者にお加え頂きましたこと、関係者の皆様に心より感謝申し上げます。
昨夏、偶々見かけた『イヤホンガイド解説者オーディション』の文字に目が釘付けになりました。歌舞伎ファンとして数十年。自分はどんどん深みに嵌りながら、ふと周囲を見渡すと意外と歌舞伎の面白さに気付いておられない方が多いのですね。勿体ない。この無限の歌舞伎沼にもっとたくさんの人を引きずり込みたい! と、そんなことを妄想していた折でした。ふうむ、ダメもとで、まずはやってみようかと挑戦を始めました。
しかし、いざ解説原稿に取り掛ってみるとこれは大変。知っているようでもひと言記すには読んで観て調べて歩いて。いやはや力不足の痛感です。でも、知れば知るほど発見の連続、楽しいことこの上ないのです。ああ、歌舞伎は面白い。奥深い。途方もない。
望外の機会を頂き、喜び勇んで今後もチャレンジを続けていきたいと念じております。

 

辻陽史(演目『京鹿子娘道成寺』)

【受賞者コメント】

この度は、「令和チャレンジ賞」をいただき、ありがとうございます。
オーディションでは、歌舞伎舞踊「京鹿子娘道成寺」の解説に挑戦いたしました。解説に際しては、舞踊の内容を伝えることに加えて、お客様に竹本、長唄という音楽も聴いていただけるように解説をしなければならず、作成当初は、解説の入れどころ、言葉選びなど、なかなか思うようにいきませんでした。解説員の方がどのようなタイミングでどのように解説なさっているのかを勉強しに何度も劇場に通っているなかで、いつも当たり前のように使っているイヤホンガイドの奥深さを改めて実感いたしました。
歌舞伎の魅力をしっかりとお伝えし、歌舞伎を初めてご覧になる方にも、歌舞伎通の方にも、劇場で充実した一幕をご覧いただける解説をお届けできるよう、日々精進してまいります。



審査員からのコメント

特別審査員


この度のご受賞、誠におめでとうございます。そして、心よりありがとうございます。
皆様の原稿から長い年月を生き続けてきた歌舞伎の歴史を感じました。歌舞伎は演劇として現在も生き続けていますが、歴史が出来ることによって、過去を知るという魅力が生まれ、知ることをヒントにその過去を想像する。そして現在との比較をするなど歌舞伎の新たな楽しみ方が誕生しました。歴史と知識を存分に発揮された原稿にありがたく思います。
そしてもう一つ。御見物に感動していただく演劇として存在している歌舞伎への愛情を感じました。目の前で演じている役者への暖かな思いが、ガイドされる声の端々に感じ舞台を支えていただけるものと確信しています。知れば知るほど面白く、摩訶不思議な歌舞伎をどうぞ末長く支えてくださることを祈念しています。
何はともあれ、おめでとうございます。


松本幸四郎



安孫子正(松竹取締役副社長 演劇本部長 )

受賞者の皆様、おめでとうございます。
130名近くのたくさんの応募者の中から幾多の選考を経て選ばれただけあって、それぞれに個性的で、歌舞伎に対する愛情の溢れた内容だったと思います。
どういうタイミング、どういう内容の解説がお客さんに一番役立つかを、資料調査し、原稿に起こし、更に、どういう語り口で音声に置き直せば一番伝わるかの工夫を重ねていく・・・・常々、歌舞伎公演を製作する側にいて、当たり前のように思っているイヤホンガイドが、芝居の製作と同様にたくさんの労力の上に成り立っていることに改めて気付かされました。
《難解に聞こえるセリフや音曲も、隣に座った見巧者がちょっとアドバイスをしてくれるだけで理解が進み、愉しみ方の幅も広がってくる》イヤホンガイドがスタートした最初のきっかけがそうであったと聞いています。

皆様の解説が、初見から長年のファンに到るまでの幅広いお客様に届いて、歌舞伎を愛して下さる観客の裾野を広げて行ってくれることを願ってやみません。


西形節子(イヤホンガイド解説者)

沢山の皆様にご応募いただきましたが、イヤホンガイドのことを熟知してよく理解してくださっている方が多いということを嬉しく有難く思いました。解説者オーディションの審査員も今回で三度目ですが、ご応募いただく解説原稿もナレーションも、回を重ねる毎に全体的にレベルアップしているように感じます。皆様それぞれに特徴のある、個性のある原稿で優劣つけがたく、受賞者を選出するのには大変苦労をいたしました。受賞された方々には、これからも歌舞伎を愛し楽しんで、素敵な解説をお客様に届けてくださることを期待しております。

 

園田栄治(イヤホンガイド解説者)

「解説者」という名前になっていますけれども、私は「解説」をしているとは思っておりません。お客様と一緒に芝居を観ている感覚で、何が楽しいのかということを伝えるご案内をして、芝居を観る楽しさを増幅できるようにするのがイヤホンガイドの役目だと思って40年やっています。オーディション受賞者の皆様とも、歌舞伎に夢中になってくれるお客様をどうしたら増やしていけるのか、一緒に考えていけると良いなと思っている次第です。

高木秀樹(イヤホンガイド解説者)

今回のオーディションにもたくさんの方が興味を持って応募してくださり、ありがとうございました。
受賞されなかった応募者の皆様も、このオーディションに挑戦したことで、今までとはまたひとつ違う歌舞伎の見方ができるようになったのではないでしょうか。将来、解説者になるならないということに限らず、皆様の今後のお芝居ライフがさらに豊かになることを願っています。これからもどうぞ良いお客様としてお芝居を楽しんで、盛り上げてください。
受賞された皆様、解説者になるということは、歌舞伎の純粋なファンではいられなくなるということです。芝居好きにとってそれは辛いことですが、お客様に解説を届けるという仕事は、やりがいのある仕事であることは確かです。イヤホンガイドはサービス業。丁寧に伝える力をどうぞ磨いてください。共に頑張りましょう。


 

オーディションNEWS

1月15日UP

二次審査の結果をお送りしました。
力作の解説原稿ぞろいで、審査も時間をかけてじっくり取り組みました。
第三次審査は、ナレーションと面接審査です! 二次審査通過者の皆様とお会いできるのを楽しみにしております。

9月4日 UP! 一次審査が終了し、審査結果を皆様にお送りしました。
一次審査では「あなたにとって歌舞伎の魅力とは?」をテーマに作文を書いていただきましたが、熱い思いの伝わる作文や個性の光る作文がたくさん集まりました。
第二次審査はいよいよ解説の執筆!10月30日提出締め切りです。
8月5日 UP! 応募は7月30日で締め切りました。127名の方からご応募をいただきました。
第一次審査の作文課題をお待ちしています。
   

令和元年、歌舞伎イヤホンガイドの日本語解説者オーディション開催決定!


歌舞伎が好きで、その素晴らしさや楽しさを広く知ってもらいたいと思っている方、歴史や日本文化に詳しく、その知識を活かしてみたい方、自分ならこんな解説をしてみたいというアイデアをお持ちの方、皆さんのチャレンジをお待ちしています!

*応募は終了しました

松本幸四郎さんがオーディション特別審査員に決定!

コメントもいただきました!


幸四郎さんからのコメント

令和という新しい時代になりました!
歌舞伎界全体もますます盛り上げていければと思っております。歌舞伎を愛してくださっている皆様、是非オーディションに挑戦して、歌舞伎の魅力をいろんな方に伝えてくださる解説者になってください!



◆イヤホンガイド解説者のお仕事って?

 

同時解説イヤホンガイド解説原稿を執筆し、ご自身でナレーションをするお仕事です。
今回は歌舞伎部門のみの募集ですが、その他、文楽や能などの伝統芸能の分野で活躍しています。

観劇前のお客様向けレクチャーのお仕事もあります。


現役解説者が登壇する「オーディションプレイベント」を開催決定!!
参加者募集中!


イベントは終了しました。たくさんのご参加ありがとうございました。
 → イベント報告レポート



「解説者のお仕事とは?」「オーディション経験談」などを交えた解説者のトークイベントです。オーディション応募を迷っている皆様、この機会にぜひご参加ください。
日時 6月23日 15:45~16:45(予定)
場所 歌舞伎座3階『花篭』(歌舞伎座のチケットをお持ちでなくても入場できます)
入場 無料(事前申し込み制・先着順)
内容 1 解説者座談会
高木秀樹(イヤホンガイド解説者)、中川美奈子(イヤホンガイド解説者・2015年度オーディション優秀賞)
司会進行:五十嵐大祐
2 オーディション応募について概要説明
3 質疑応答タイム
参加申し込み
方法

メールのタイトルを「イベント申込み」とし、
メール本文に ①お名前 ②電話番号 ③メールアドレス ④参加人数 を明記のうえ、
audition@eg-gm.jp 宛にメールでお申し込みください。





◆オーディション募集要項◆


下記の募集要項をよくご確認のうえ、ご応募ください。
ご応募は締め切りました。

【募集内容】

歌舞伎の同時解説イヤホンガイド(日本語版)の解説者

最優秀賞(1名) 副賞:賞金30万円
優秀賞(若干名) 副賞:賞金5万円


オーディション入賞者には、イヤホンガイド解説者としてデビューしていただきます。

【参加資格】

解説を自身で執筆・ナレーションできる方。
または、二人一組のペア。(例えば、執筆担当者とナレーション担当者)
歌舞伎が好きで、そのすばらしさ、楽しさを広く知ってもらいたいと思っている方。
観劇暦の長短は問いませんが、歌舞伎について広く知識をお持ちの方。

探求心が旺盛な方。

歌舞伎公演でイヤホンガイドを利用したことがあり(応募時までに利用していただければ可)、「自分ならこんな解説をする、してみたい」という具体的な案をお持ちの方。
入賞した場合にはその後、継続して解説者として活動できる方。
   
解説者は解説原稿を執筆・ナレーション収録の他に、公演初日前後の3~5日間程度、現場(当社録音ブースや劇場)で解説制作に携わる時間が取れることが必須です。
解説者としての活動に対しては、報酬をお支払いします。



【応募受付期間】

2019年(令和元年)5月15日~7月30日

 

【審査概要】

作文審査(一次)、解説原稿審査(二次)、ナレーション&面接審査(三次)


【審査員】

特別審査員:松本幸四郎(歌舞伎俳優)

安孫子正(松竹株式会社 副社長)、西形節子(イヤホンガイド解説者)
園田栄治(イヤホンガイド解説者)、 高木秀樹(イヤホンガイド解説者)


【審査詳細・日程】

1 一次審査(作文審査)
作文課題 「あなたにとっての歌舞伎の魅力を2,000字~4,000字で語ってください。」
作文提出締め切り 2019年8月10日
一次審査通過者決定・
二次審査書類送付
2019年9月初旬
作文審査の作文は、指定の書式にご記入ください。応募フォームにご記入いただいたメールアドレス宛てに、応募書類のダウンロード方法をお送りします。

2 二次審査(解説原稿審査)
下記2つのうちのいずれかの演目を選択し、実際に解説原稿を作成・提出していただきます。
課題演目 演目①『義経千本桜 川連法眼館の場』
   

演目② 『京鹿子娘道成寺』

解説原稿提出締め切り 2019年10月30日
二次審査通過者決定 2020年1月中旬
解説原稿の作成のしかた

3 三次審査(ナレーション&面接審査)
二次審査通過者を対象に、ナレーションおよび面接での審査をおこないます。
2020年2月中旬に実施予定

4 最終審査結果発表
2020年4月中旬~下旬に発表予定


【お問い合わせ】
〒104-0061 東京都中央区銀座3-14-1 銀座三丁目ビル5階
イヤホンガイド・オーディション係
メールアドレス:audition@eg-gm.jp




◆6月23日開催 オーディションプレイベント 報告レポート◆

 

解説者オーディションのプレイベントを6月23日に歌舞伎座「花篭」で開催しました。
オーディションへの応募を迷っている方や、解説者に興味がある方に向けて、解説者の仕事についてより詳しく知っていただこうと開催した当イベント。
80名ほどの方が集まり、イヤホンガイド解説者の高木秀樹氏、中川美奈子氏、を迎えた「「解説者座談会」(進行役:佳山泉氏※)に真剣に聞き入る様子が印象的でした。

※進行役で登壇予定だった五十嵐大祐氏は事情により欠席。

 

当日の内容レポートをお届けします。

解説者になったきっかけ、解説者になる覚悟

まず、お二人が解説者になったきっかけについて伺いましたが、高木さんは「自分から手を挙げて解説者になったわけではない」とのこと。元々、学生時代からイヤホンガイドスタッフのアルバイトをしていた高木さん。当時、解説者の数が足りていなかったことから、「業務命令」として解説を始めました。子どもの頃から歌舞伎に親しみ、歌舞伎や文楽が大好きだった高木さんですが、イヤホンガイド解説作成はもちろん一からのスタート。うまく解説ができずに試行錯誤した期間が続いたそうです。観られる芝居は全部観るようにして勉強して、諦めずに続けて29年…。「今では“やりがいのある仕事”だと言えるけれども、当時は本当につらかった。仕事で芝居を観ることほどつらいことはない。芝居が楽しめなくなっても良いというくらいの覚悟が必要だ」という熱のこもった話が続きました。



オーディションに挑戦して・・・

中川さんは、前回、2015年のオーディション経験者。高木さんも「ずば抜けてセンスが良かった」とお話していたくらい、好評価を得て、優秀賞に選ばれました。20数年間、専業主婦としてほとんど家族のために時間を使っていたという中川さんですが、自分自身の好きだったものをもう一度思い出し、挑戦してみることにしたのだそうです。「学生時代の論文書きよりもオーディションの課題のほうが必死に取り組んでいたような気がする」と中川さん。「まだ自分にも新しいことに挑戦する気力や勉強するエネルギーがあったのが嬉しかった。同世代の方々にも是非オーディションに挑戦して仲間に入って欲しい」と語りました。


ナレーション、語りも大事

前回2015年の解説者オーディションも、第三次審査はナレーション審査でした。実際に録音ブースに入って自分の原稿を読むという初めての経験にとても緊張したという中川さん。高木さんも、解説を始めた頃に語りのスキルをあげるのには苦労したそうですが、「イヤホンガイドの解説は、原稿の内容が良いだけではだめで、語りも大事だ」といいます。といっても、アナウンサーのようなナレーションスキルが必要ということではなく、目の前にいるお客様に向かって直接話しかけるような、伝わりやすい語り口であることが重要。ナレーションを磨くと原稿も「声に出して読んで伝える」
原稿が書けるようになってくるのだそうです。


解説者あるある?
話題は、実際、解説者はどのようにして解説を作成しているのか、という話に。「解説を担当する演目が決まると、まずは資料を調べたり、過去の上演映像を確認しながら、全体の構成を練るところからはじまる」とお二人。中川さんが、毎月この解説作成時期になるとうなされて悪夢を見る…とお話しされると、高木さんも、ご自身の担当箇所だけイヤホンガイド放送が流れないトラブルが起こる夢など見ると発言。さらに進行役の佳山さん(解説者としても活躍中)も同じような経験があるそうで、解説者にとってのあるある話のようです。それだけ、初日に解説作成を間に合わせるためのプレッシャーを感じながら、取り組んでいるということなのかもしれません。

また、高木さんは、テレビを見たり、歌舞伎でない他の演劇(例えば宝塚歌劇など)を観たりしても、常に頭の中に解説が流れてしまうそうです。なんとも特殊な職業病です。


やりがいを感じるとき

多大なプレッシャーを背負い、生みの苦しみを味わいながら解説をつくるというお仕事について、高木さんは「誇りをもってサービス業だと思っている」そうです。劇場にはイヤホンガイドを聴きに行っているわけではなく、芝居を観に来ているわけなので、「あなたの解説がとてもよかった」と言われるよりも、「あなたが解説している芝居が面白かった」という感想を聞けるほうが嬉しいと高木さん。あくまでも舞台に集中でき、耳には意識がいかないイヤホンガイドが一番良いと思って作っていると語りました。

中川さんも、確かに辛くて大変な仕事ではあっても、自分のイヤホンガイド解説で舞台を観たご友人から、「面白かった」「楽しかった」という感想を聞けると何より嬉しいそう。地方に住む同級生が巡業公演に足を運び、解説を聞きながら舞台を楽しんだあとに、「久しぶりに生きているような気がした」と報告してくれたというエピソードと共に、「そういう声を時々聞けると、ちいさなご褒美をいただいたように感じる」というお話が素敵でした。


-------------------------------- ここから、報告レポート後編(7/17UP)です ---------------------------------

解説者に必要なのは・・・
難しい資格など特に必要なく、どなたでも応募していただける解説者オーディションではありますが、話題は「歌舞伎の解説者に必要なことは何か」というお話に。高木さんいわく、「もちろん歌舞伎や古典の知識は必要」とのこと。高木さんご自身は大学では法学部で、伝統芸能とは全く関係のない学問を学んでいたということで、平家物語、古事記、万葉集などの古典文学の基礎知識については、解説を始めるようになってから必死に勉強したそうです。「解説者への道には、近道がない。より多くの芝居を観て、より多くの本を読んで、より多くの人の話を聞く。これしかない。」と高木さん。イヤホンガイドを頼りに芝居を観てくださるお客様に対して責任があるのだからと、解説者としての決意のほどが滲みます。


解説者に向いている人
歌舞伎のイヤホンガイドは、上演中の芝居を解説するというまさに前例のないサービスで、どういう風にやれば良いのか、常に工夫し模索しながらイヤホンガイドのスタイルというものができあがってきました。そもそもイヤホンガイドのサービスが始まったきっかけは、字幕も吹替もないフランス映画を飛行機の中で観ていた時に、隣の席の人の解説を聞きながら観たらよくわかって面白かった、という経験に基づき、創業者である先代の社長が解説サービスを思い付いたところから始まっています。家族と一緒にテレビを観ている時などに、「ここがこうで、これはこういうところが面白いんだよ」などと人にうまく伝えられるタイプの人は解説者に向いている!と高木さん。


好きだからこその悩み!
中川さんは、解説作成についてはまだまだ模索中とのこと。ご自身も日本舞踊経験者ということで、舞踊演目の解説を担当することが多い中川さん。学生時代は平安文学が専門で和歌の勉強をしていたこともあり、和歌と同じ美しさを持つ舞踊の詞章の美しさを潰したくないというところが悩みどころだといいます。邪魔にはならないように、余白を大切にした解説を心がけているそうです。その中でも大切にしているこだわりポイントは、大好きな着物と日本髪についての解説で、衣裳と鬘については毎回解説するようにしているとのことでした。


さすが「伝える、話す」ことを生業とする解説者の座談会、話は尽きませんが、このあたりで参加者の皆様からの質問にお答えする質疑応答コーナーへ。


Q (お客様より)ガイドさん毎の個性はどの程度出せるのでしょうか?ご自身の個性、好きなところ、ここをこういうふうに解説したいというところが100パーセント通るのか?共通で解説するという必須項目などあるのか?
A (高木さん)何十年やっているベテランでも、新人解説者でも、一国一城の主。新人でも、自分の解説には責任を持たされる。先輩からのアドバイスでも、「こういう風な解説をしなさい」などとは言わない。間違いはもちろん正しますが、それ以外は、自由にやってください。ただし、自分の知識をひけらかすだけではなく、「よくわかってもらえるように解説をする」というのは大前提。本編は時間的な制約があるので言えないこともある。幕間の時間はたっぷり解説ができるので、お好きなようにおしゃべりください。
  (中川さん)最初はびっくりしたくらい、全てを任せていただける。そこも大きなやりがいのひとつ。自分の思うように解説を作ってお話しすることができる。もちろん、先輩方からアドバイスをいただき、修正・録り直しをすることもあります。最後まで自分の納得のいくように作り上げることができます。
   
Q (お客様より)歌舞伎の観客には様々な年代の方がいらっしゃいますが、ターゲットはどのように設定されていますか?
A (高木さん)難しい質問!70代の人の常識と、20代の人の常識は違う。弁慶・牛若丸の「♪きょうのごじょうのはしのうえ~(※有名な唱歌『牛若丸』の一節)」という歌を知らない世代もいる。『勧進帳』のその後について、弁慶や義経がどうなるのかという歴史的事実の共通認識がない若い世代にも、どうやって伝えれば良いのか。もはや、そういう世代にとっては、歌舞伎を観ることは外国の演劇を観るような感覚かもしれない。どこにターゲットを定めるかは本当に難しい。今月の歌舞伎座でやっているイヤホンガイドと、国立劇場の鑑賞教室のイヤホンガイドの解説を比べてみても、何が必要とされているのかは全く違う。東京と大阪でも違う。東京では、ここは芝居の見せ所というところはわざとしゃべらない。逆に、大阪では解説が多いほうがお得感があるといって好まれる。(笑)
どこまで解説するのか。どうしたら良いか?ということは解説者同士でも話したりします。
  (中川さん)例えば、毎年お正月に公演がある新春浅草歌舞伎などは、初めて歌舞伎を観るような若いお嬢さんたちも若手花形の俳優さんたちを観にいらっしゃるので、基礎知識を多めにするなどしている。地方をまわる巡業の公演などでも、1年に一度だけの機会を楽しみにされているお客様がたくさんいらっしゃるので、さらに丁寧にお話をさせていただくようにするなど、担当のスタッフにも傾向を教えてもらいながら進める。
 

(佳山さん)劇場や公演ごとのお客様の客層を想定しながら作っているということですね。

 

解説者を目指す人たちへ
最後に、おふたりに、解説者を目指す方々へのアドバイスをお聞きしました。「とにかく歌舞伎が好きな方で、誠実に解説制作と向き合ってくださる方でしたら、どなたでも!」と中川さん。インターネットなどですぐに情報を得られる時代ですが、たくさん資料を読んだり、舞台になった土地にはできるだけ足を運ぶようにしたりと、自身で探究していく姿勢が解説者には必要。中川さんも、「孫引きはするな」という学生時代の恩師の教えを守っているとのこと。そのお話を聞いて、「資料集めも芸のうち」と高木さん。「スマホでちゃちゃっと調べてやるなんて論外だ」と強めの口調。高木さんのご自宅の本棚には、ベンツ1台が購入できるほどの価値のある書籍がびっしりと並んでいるそうです。
今回のオーディション審査員のひとりでもある高木さんは、「大変だけどやりがいのある仕事。人の喜びを自分の喜びとできる人はぜひ応募してください。」と激励を送り、「誠心誠意、採点させて頂きます!」という言葉で締めくくりました。
   
ここで、時間の都合上、イベント当日には取り上げきれなかった質問を【質問コーナー番外編】として、Q&Aにしてご紹介します。
   
Q 頻繁に上演される演目はその都度解説を変えているのでしょうか?
A はい。解説は、毎回その上演に合わせて作り変えます。基本的な解説事項は変更なくとも、俳優によって演技の型の違いやタイミングに合わせたり、上演台本に合わせて調整します。また、開演前や休憩時間の解説には、その時々のタイムリーな話題を織り込みながらお話をしたりします。
Q 解説者の担当演目が決定してから芝居の初日まで、期間はどのくらいありますか?
A 初日の約1か月半前までに解説担当者が決定します。毎月どこかの劇場で解説を担当しているという解説者も多いので、複数演目の下調べと執筆を同時並行でしている解説者も少なくありません。
Q オーディション参加資格に「入賞した場合にはその後、継続して解説者として活動できる方」とありますが、1年のうちで数か月のみなら可能、もしくは特定の地域での業務なら可能という条件つきでも大丈夫でしょうか?
A 場合によります。イヤホンガイドを実施している劇場は東京と関西が圧倒的に多いです。応募の前に迷われることがありましたら、個別にご相談ください。
Q 解説者の仕事だけの収入で生活はやっていけるのでしょうか。
A 毎月、解説の依頼があるとは限りません。イヤホンガイド解説だけの収入では生活は難しいと言わざるを得ません。ただ、イヤホンガイド解説者としての活躍をきっかけに、別の現場でも解説者としてのスキルを発揮しながら仕事をしている解説者もいます。
Q 今までに2人組ペアで解説をされた方はいましたか?
A 原稿の書き手と読み手が別の人、という場合が過去にも何度かありましたが、これまで基本的には「一人の解説者が解説を書いて自分で読む」というのをイヤホンガイドのスタイルとしていました。新しい時代の解説者として、一人ではなくペアというスタイルもあって良いのではないか?ということで今回の応募要項には追加しております。

以上、質問コーナー番外編でした。
その他、質問がありましたら audition@eg-gm.jp までお問い合わせください。