『伽羅先代萩』
(めいぼくせんだいはぎ)
くまどりん
「伊達騒動」、この事件はNHKの大河ドラマにも取り上げられました。  この歴史上有名な事件を題材にとりあげたのが、『伽羅先代萩』です。  上演される回数の多い人気歌舞伎狂言です。
ただし、この演目を見て歴史を勉強しようと思ってはいけません。 Q: 「伊達騒動がおきた時代は?」・・・・・A:「鎌倉時代!」、  Q:「騒動を企んだ人は?」・・・・・A:「仁木弾正!」  などと、テストで答えないように・・・
物語の幹(みき)となるのは奥州足利家(あしかがけ)のお家騒動です。  この騒動の原因は、殿様・足利頼兼(あしかがよりかね)の放蕩ざんまいの廓(くるわ)狂いです。  タイトルにある「伽羅(めいぼく)」というのは、香木の最上種・伽羅(きゃら)を「銘木(めいぼく)」と読ませたものです。  正式な植物名は「沈香(じんこう)」といって、アジアの熱帯地方に生える高さ10メートルくらいの香木。  とても堅くて文字通り水に沈みます。  そのままにしておくとどんどん良い香りを発するということで、高級な調度品の木材としても重用されます。  当然、お値段もメチャ高い。  足利の殿様は、その伽羅で下駄をつくらせたんです。 香りはいいし、木が堅いのでカラコロと音も軽快。
これを履いて毎晩のように、お目当ての太夫(たゆう:最高ランクの遊女)に会いに廓へ通っています。  廓帰りのこの殿様が、お抱え力士の助けを受けながら、刺客たちを優雅な立ち回りで次々とやっつけていく場面が序幕。
でも、この殿様がふとしたことで逆上して、太夫をなぶり殺しにしてしまう・・・ ということで、殿様は失脚、代わって当主になるのは、まだ幼少の鶴千代君(つるちよぎみ)。  お家乗っ取りをたくらむ悪人一味は、お世継ぎの若君を暗殺しようとしています。  ここからが、人気ある場面「御殿・床下(ごてん・ゆかした)」と「対決・刃傷(たいけつ・にんじょう)」です。  主要登場人物は、いづれも歌舞伎屈指の大役です。
まず、若君を悪者たちの魔の手から守りぬく乳人(めのと:乳母)政岡(まさおか)は、女形(おんながた:女方とも)大役中の大役。
お家乗っ取り派の主犯格で妖術つかいの仁木弾正(にっきだんじょう)は、男役(たちやく:立役とも)で屈指の大物。
そのほか、仁木弾正の妹で、政岡と女の攻防戦を展開する、残忍な局(つぼね:お屋敷勤めをする女性の一番高い位)八汐(やしお)。
御殿の床下に張り込みつづけて若君を守るガードマン・荒獅子男之助(あらじしおとこのすけ:名前もすごいが床下にいることもすごい!)
そして乗っ取り派の野望を打ち砕く名裁判官・細川勝元(ほそかわかつもと)。
もう見どころいっぱいの名作です!
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